心理療法を受けることへの抵抗

2018年03月10日

心理療法を受けることへの抵抗について

 

 心理療法を受けることは大切だと耳にしたことのある方は多いかと思います。一方で、実際に心理療法を受けたことのある人は少ないかと思います。心理療法への抵抗にはどのようなものがあるかを考えて行きます。

費用がかかる
 心理療法を受けるには費用がかかることが大半です。心理療法の費用についてはこちらでも触れていますが、一回で5000〜10000円ほどかかります。これを週に1回だと月に4回20000〜40000円、週に2回なら月に8回40000〜80000円。週に3回なら月に12回60000〜120000円。週に4回なら16回80000〜160000円。
 週に4回だと日本の若手の心理士の給料は殆どがなくなるかもしれません。
 心理療法では週1回と2回以上で差があるという意見があり、週2回以上の方がその人の関係の質が面接室に現れやすいと考えられています。週2回の心理療法に払う40000〜80000円を別のことに使うことを考えると躊躇いが生まれることはあるかと思います。
 この他にも近くに心理療法を受けられる場所がないと、都市部まで移動する交通費がかかります。週2回受けるとすれば宿泊費が別にかかります。さらに、土日に心理療法を受けられるとは限らないため、仕事を非常勤にするなど心理療法を受けることに合わせた生活をする必要まで出てくるかと思います。
 現実的な制約は多いですが、現代社会において様々な専門的技術は金銭と交換されることが多いです。心理療法を受けることは、情緒を豊かに扱う心理療法をしていく上で役に立つかと思います。

リターンが得られない
 こちらは「費用がかかる」とも近いですが、例えば心理士が心理療法を週に4日受けたところで、その人が心理療法を仕事にして生活できるかということとは無関係です。なぜなら、心理士に割当てられる予算は限られていますし、開業したところで週に4日も心理療法に通おうとするクライエントは少ないからです。このように心理療法を受けることの経済的リターンは非常に小さいです。寧ろ、マイナスかもしれません。
 ここには私たちが馴染んでいる経済システムの思考が入り込んでいる部分があると思います。経済的な利益のないことには価値がない、というような。また、生活するための仕事として心理療法をするのだから、収入に直結しないことをするのはおかしいと考えることもできるかもしれません。
 しかしながら、経済システムは私たちにとって唯一大切なことではないです。心理士の仕事を選んだ方は高収入を得ることより価値があると思った方がいるかと思います。また、こころが経済システムに囚われることも、こころにとっては不利益なことかもしれません。おそらく、こころは経済システムから排除されているところがあります。
 経済システムから排除されていようが、こころを大切にすることは主体として生きる人間において根本的なことだと思います。

援助される立場になることがこわい
 援助をする立場として勉強をしているのに、自分が援助をされる立場になることへのこわさがある人がいるかもしれません。ここには援助をする立場と援助をされる立場という乖離が生じているように思えます。そして、援助をされる立場になることでの何らかの不安や苦しさがあるかもしれません。しかしながら、援助をされる立場の私を遠ざけることは、援助をされる立場の気持ちを遠ざけることと近いと思います。その人の中の援助をされる立場としての気持ちが遠くに投げられているのです。
 人は援助をする側になることも、援助をされる側になることも両方がその時によりあります。この相互的な交流を心理療法の中で体験して行くことができると、誰かのこころの世界を考えることに役立つのではないかと思います。

個人情報の取り扱いが心配
 心理士が心理療法を受けることは、その人の個人情報が同じ業界の人に知られることでもあります。他職種ならいざ知らず。もし個人情報が広まってしまえば何らかの不利益を受けることがあるかもしれません。一つ言えることは、個人情報は徒に誰にでも伝わることは、心理療法士が倫理観を備えている限り、ないことだと思います。
 しかし、どうしても心配であれば、心理士に事前に個人情報の取り扱いについて確認することを強くお勧めします。そして、可能であれば公的機関よりは開業心理療法室を利用されることをお勧めします。

必要性を感じない
 心理療法を体験しなくても心理療法の体験があるということでしょうか。それとも、心理療法を受けなくても気持ちの動きを十分捉えているということでしょうか。そんな方がいるのなら確かに心理療法を受ける必要はないと思います。

 以上、心理療法を受ける上での抵抗を考えてみました。もちろん、この他にもその人特有の様々な不安や心配があるかと思います。
 費用については、学生や収入が少ない若手のうちは心理療法の料金の相談を受け付けてくれる心理療法士がいると思います。
 気持ちの面での不安や心配については、trial として1回のみや数回だけでも試してみると良いのではないでしょうか。心理療法を受ける不安を心理療法士と話してみると良いと思います。
 私が見た限り、海外の心理療法のinstitute では心理療法を受けることは訓練過程の中で自然なことが殆どのようです。


 


心理療法 訓練
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