心理療法の他職種の理解
2018年03月10日
心理療法は他職種からどのように思われているのかについて

ある程度専門的な過程を経た人には心理療法がどういったものかという感覚は付いていることかと思います。しかしながら、その感覚が専門的な過程を経ていない人と共有できるかというとそれは難しいと思います。
例えば、転移というとクライエントが心理療法士に対して抱く様々な思いなどを含む過去に由来する体験を指します。ところが、このことは心理療法士以外には理解できにくいです。なぜなら、心理療法士以外の人は心理療法を温かい快適なものと思い込んでいることがあるからです。そうした想定に従うと、心理療法士はクライエントと信頼した関係を常に築き、クライエントは心理療法士に大きな信頼を寄せ、文句など言わない、理想的な受容関係にならなければ、心理療法ではないということになります。しかし、実際の心理療法過程ではクライエントが不満を口にしたり、遅刻したり、時には面接など無意味という言葉さえ出てきたりするものです。こうしたときに心理療法士以外の他職種は心理療法士をダメだとか、ちゃんとしていない、下手だと思うかもしれません。すなわち、転移というものの理解が十分ではありません。そうこうしているうちに、心理療法士は面接室外に現れた転移としての全体の関係を見立てに含めつつも、職場で孤立し仕事をやりにくいように思うかもしれません。
このようなことを防ぐために、心理療法に理解の深い職場を選ぶことや、事前に職場の人たちに心理療法に従い起きうることを伝えるなど、積極的な言語化が必要となります。不十分な理解の環境に留まりつつ、どうしても変化の起きにくい職場であれば、より理解の深い職場に移動することも一つの手段です。
職場の理解を得ることが心理療法の一つの仕事になってしまうのは残念なことですが、理解の十分でない職場が多いことは現状確かであり、この葛藤は簡単に解消することは難しいです。可能であれば、経験のある心理療法士がいる職場を選びましょう。先達の奮闘により職場の理解が得られやすい環境になっているかもしれませんし、何かあったときに周囲に言葉で上手く伝える手助けが得られるかもしれません。
大学院生のうちから、専門的な用語を具体例に即して言葉で伝える習慣を付けていくことも望ましいかと思います。
今後、心理療法についての理解が十分に得られないままで心理士と呼ばれる人は非常に増えると考えられます。このことは心苦しい限りですが、心理療法士として言葉で伝えられるように先達のスーパーヴィジョンを受けて言語化していく訓練はより必要となると思います。
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